判断能力に疑問のある相続人がいるのですが、このまま遺産分割をしてよいでしょうか?

「後見人制度」の利用をお勧めをしていますが、人によって事情にそぐわない場合もあります。
後見人制度のメリットデメリットを含め、詳しく解説します。

後見人制度とは

相続人が認知症等により判断能力が低下している場合には、そのまま遺産分割協議を成立させても、後々、当該遺産分割の有効性を争われるおそれがあります。遺産分割が無効であるという主張をするのに時効はありませんので、強引に事を進めても不安定な状態に置かれ続けることになります。

判断能力が低下した相続人がいる場合に遺産分割をするとなると、後見人制度の利用をする必要があります。

後見人制度は、家庭裁判所に申し立てることで、判断能力が低下した方に後見人、保佐人または補助人をつけて、本人(判断能力の低下した相続人)の財産管理をしてもらう制度です。

後見人制度の注意点(デメリット)

後見人制度を利用する場合の注意点は次の通りです。後見人を選任することを前提にお話しします。

  1. 後見人は家庭裁判所の監督のもと本人のために財産管理をします。
    そのため、基本的には他の相続人の希望ではなく、本人の財産管理として適当かという観点から遺産分割協議がなされます。
  2. 遺産分割が終了すれば後見人も終了というわけにはいきません。
    遺産分割終了後も最後(被後見人死亡)まで後見人は財産管理を行います。
  3. 後見人には報酬が発生し、この報酬は本人の財産から支出されます。
    報酬額は被後見人の財産額等に応じて家庭裁判所が決めます。

後見人制度の利用をしないことをお勧めしない理由

このようなデメリットとも思える点を理由に、後見人制度の利用をせず、遺産分割もしないままにしておく例を時々見かけます。
その判断は状況次第では理解できる面もありますが、次の理由からあまりお勧めはしません。

  • 遺産分割をしなければ遺産は動かせません。
    ただし、令和元年7月から遺産の仮払い制度ができましたので、その制度の枠内であれば預金の引き出しが可能です。
  • 遺産分割を放置するということは、その判断能力の低下した方が死ぬのを待つ(その後にその相続人らと遺産分割する)ということを意味します。これは長期にわたる可能性があります。
    その間、その判断能力の低下した方の財産管理や身上監護はどうするかという問題があります。
  • 遺産分割を放置した結果、他の相続人の判断能力が低下することがあります。
    そうなった場合は、またその方が亡くなることを待つのか(その方の財産管理や身上監護はどうするのか)という問題があります。
  • 場合によっては、他の相続人が死亡することもあり得ます。
    そうなると、相続人が増えるというケースもあります。
    遺産分割は相続人が増えれば増えるほどまとまりにくくなります。
    人には他人からは容易には解りかねる各々の事情があるからです。

後見人制度の利用は専門家に相談してから

遺産分割のために後見人制度を利用して後悔したという相談者様もいらっしゃいますが、基本的には、成年後見制度に対する過度の期待をもって申し立ててしまったというケースが多いように思えます。

期待外れではあったと思いますが、第三者の目からみると結果的には成年後見制度を利用しておいて良かったのではないかと感じることもあります。

このあたりは十把一絡げに成年後見制度を利用すべきとも、利用すべきでないとも言い切れませんので、一度専門家に相談されることをお勧めいたします。

上原子 将巨

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